響きの正体

たくさんの“響き”
“響き”と聞いて、思い浮かぶモノと言えば何があるでしょう?
『リバーブ』や『エコー』によって響く音も、“響き”ですし、
また、美しい歌声や『芯のある声』と呼ばれるものも“響きがある”
・・・と、表現されます。
感情に訴える歌詞や言葉も、“心に響く”と言いますね。
“響き”というのは、日本人によく見られる、
とてもファジーな表現だと感じます。
『リバーブ』や『エコー』における“響き”とは、
《反響音》や《残響音》を指します。
感情に訴える言葉が“響く”、というのは、
《感動》や《共感》を指すと考えられますね。
両方とも、音楽には欠かせない要素ですが、
ここでは、
美しい歌声・芯のある歌声、と表現される“響き”を
掘り下げていきたいと思います。
美しい高音・うるさい高音
高音域が出せない!・・・と、力いっぱい息を押し出して、
叫び声に近いような声で歌う人を見た事がありませんか?
何を隠そう、昔の私もそのタイプです。
そういった高音域の声は、うるさいと感じます。
しかし、美しい高音を出せる人の高音域は、
全然うるさいと感じません。むしろ聴き惚れてしまうくらいです。
高音域を力任せに出している人の歌声は、
マイクによって音量が大きくなっているだけで
“厚み”や“豊かさ・芯”がないと感じませんか?
それに対し、美しい高音を出す人の歌声には、
“厚み”や“芯”があり、いわゆる“響き”を感じませんか?
この違いは何なんでしょうか?
そこに“響き”の正体が隠されていそうです。
倍音の登場
さあ、ここでまたまた“音叉”の登場です。
もう覚えてしまったと思いますが、440HzのA(ラ)の音が鳴る道具です。
実はこの“音叉”の音は、『倍音が含まれていない音』なのです。
※厳密に言うと、最初は倍音を含みます。・・・が、基音以外はすぐに減衰し
消えてしまう為、倍音を含まない【純音】になるんです。
単純な“正弦波”と呼ばれる音で、聴けばすぐに分かりますが、
表情や豊かさ、厚み、といったものを感じない、無機質な音です。
ここで、ある予想ができますね。
『倍音が含まれない音』・・・無機質で、豊かさや厚みの無い音。
と、いう事は・・・?
『倍音が含まれる音』・・・豊かさや表情のある、芯のある音。
と考えられませんか?
これは、歌声に関して言えばほぼ正解です。
楽器によっては、必ずしも 『倍音がたくさん含まれる』=『豊かで美しい音色』
とは言えないからです。
それを考慮して、言葉にすると、
“響きのある歌声”=【倍音をバランスよく含んだ歌声】
と言える事ができるんですね。
これが“響き”の正体です。
この“バランス”という怪しい表現ですが、これは“音色”と関係しています。
これについては、『音色の仕組み』でご紹介しようと思います。
結局は“声帯”に戻る
【倍音をバランスよく含んだ歌声】が、
美しく芯のある“響く”歌声だという事が分かりました。
という事は、大声を張り上げただけの高音は、
『倍音をバランスよく含んでいない』、という事になります。
《スペクトル分析》なるものがあり、これは簡単に言うと、
発音した“音”に、どの周波数がどれだけ含まれるか?
を分析するものです。
これで、倍音がどれだけ含まれるのかを調べる事ができるのですが、
“大声を張り上げた高音”を分析すると、基音のみが大きく出ていて、
倍音がほとんど含まれていない、という事実が目で見て分かります。
これは、
声帯の“長さ”や“張力”を上手く使えていない。
リキんでいて、声帯がしっかり振動していない。
というのが原因です。
高音を出す為には、声帯振動部を“張力”を強くして
“長く”、“薄く”する必要がある、というのは以前にご紹介しました。
そんなところへ、力任せに息を吹き付けたら、
声帯が上手く振動しない、という事はイメージできると思います。
声帯が上手く振動せず、不規則に暴れてしまえば、
当然、倍音は鳴りにくくなりますね。
これが『高音域になればなる程、息は少なく、小さくていい。』
『高音域になればなる程、力を抜いて。』と言われる理由です。
逆に、声帯がしっかり振動すれば、倍音がバランスよく含まれます。
共鳴の誤認で『固有振動数』というのをご紹介しましたが、
倍音をバランスよく含めば、体の各部位がもつ『固有振動数』
に対応した倍音が共鳴すると考える事ができます。
これも、“響き”のある歌声の要因になっています。
声帯をうまく振動させる事。
結局は“響き”も、この『声帯の振動』というところへ帰ってくるのです。
精神論や、腹式呼吸、その他多くの理論が入り乱れる中で、
『声帯の状態』というのが、いかに歌声の良し悪しを左右しているか。
徐々にでも全然構いません。理解していって頂けたら・・・
そう思います。
では次は、“音色”に迫りましょう!
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