声質と声区

・・・さてさて、ついにこの分野に切り込みます。
最近では当たり前のように、
『ヘッド・ボイス=頭声』
『チェスト・ボイス=地声』
『ファルセット=裏声』
・・・といった説明を目にしたり、耳にしたりする事があるかと思います。
『ミドル・ボイス=ミックスボイス』といった説明も、稀にあります。
正しくは『ボイス・ミックス』なんですが、
私がこれを見て抱いた疑問を挙げてみる事にしましょう。
1.サイトや本によって、説明がバラバラ。
声・発声などのメカニズムが科学的に研究されているこの時代、
なんでこんなに“定義”がバラバラなのか?
2.ボイス・ミックスとは一体、何なのか?
声を混ぜるも何も、声帯は一つしかない。
『ホーミー』と呼ばれるものがあるが、これとは別物の様子。
3.頭声、胸声といっても、声はそこからは出ない。
発声は声帯の振動によって起こる。
固有振動数の関係で、共鳴は起こりえるが
頭や胸が音を発する訳ではない。
こういった疑問がありました。
結局なんなのか?
では、その正体に切り込むとしましょう。
馴染みのない“声区”
実は、ヘッド・ボイスやチェスト・ボイスというのは
“声区(せいく)”と呼ばれるものなのです。
『レジスター』などとも呼ばれ、元々はパイプオルガン等で
使われていた用語です。
そして、サイトや本などで起こっている“定義”の混乱は、
この“声区”と“声質”をごちゃ混ぜにしている為、起こっています。
“声質”というのは、以前にご紹介したとおり、
『声に含まれる倍音のバランス』を指しています。
つまり、“音色”の事ですね。
・・・これは、特に問題ないと思います。
それに対し、ヘッド・ボイスやチェスト・ボイスといった
“声区”というのは、『発声機構』を指しています。
つまり、“声帯の状態”の事を指しているのです。
・・・発声機構?
また難しい言葉が出てきましたが、これは何なのか?
絵に例えてみよう!
例えば、筆を使って線を引いてみるとしましょう。
手元には、『太い筆』、『細い筆』、それと『中くらいの筆』の3種類があります。
太い線を引くときには、大体の方が『太い筆』を選ぶと思います。
この、使っている筆が“声区”にあたります。
つまり、太い線を描くための“機構”という事です。
それに対し、『実際に引いた線』が“声質(音色)”にあたります。
・・・と、いう事は?
そうです。
別に『細い筆』を使って、『太い線』を書いてもいいのです。
『中くらいの筆』で、『太い線』を書いたって構いません。
実際に引いた線は太いのですから、“声質(音色)”は変わりません。
しかし“機構”(使った筆の種類)が違います。
“声区”というのは、歌における『筆の種類』にあたり、
“声質”というのは、歌における『実際に書いた線』にあたるんです。
そして、厄介な事に日本ではこの“声質”と“声区”がゴチャゴチャです。
頭声や裏声、胸声に地声が、“声質”を表している言葉なのか、
それとも“声区”を表している言葉なのか、全く分かりません。
昔は、今ほど科学が進歩していなかったので、
“声帯の状態”を、うまく観察する事ができませんでした。
そのため、歌っている本人の感覚などを頼りに・・・
例えば、“頭が響いている感じがする。”という感覚を頼りに
『ヘッド・ボイス』といった名前が付いている事も、混乱の原因のように感じます。
声帯の状態は変化する。
先程は、“筆”を例えにしましたが、
声帯は、筆で例えた“太い・細い・中くらい”それぞれの状態を
全部、声帯一つでやってのけます。
つまり、“低い声”を出す時は、それに適した状態になり、
“高い声”を出す時には、それに適した状態になります。
具体的には、高い声になるに連れて、
声帯は薄く伸びていきます。
これを『伸展』と呼びます。
更に高くなると、声帯の一部が閉じていき、
振動する部分を、さらに短くしようと変化していきます。
これを『削減』と呼びます。
一連のこれらの声帯の変化は、普通に声を出せる人ならば、
訓練次第で誰でもうまくできるようになります。
「高い声を出せるかどうかは、生まれつきでも何でもなく、ただただ練習。」
私がそう言うのは、こういった声帯の変化がある、というのが根拠です。
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