【第六話】1年目の4月19日

フリーノベル『公開設定を間違えた件について』

今日は、朝一番に西城さんに話しかけられた。

普通にビビった。マジで謎なんだが。

西城さん「翔くん!おはよう!」

『え!?あ、さ、西城さん…おはよう…』

背後から思いっきり挨拶された。

西城さん「驚き過ぎだよー」

『ご、ごめん、ボーっとしてたから』

西城さん「あはは。翔くん、吹奏楽部に入ったんだね!」

『あ、うん。橋本に半ば強引に誘われて…っていうか』

西城さん「そっかー。でも翔くん昔から音楽できるし、ピッタリの部活じゃない?」

『え!?あ、うん、まぁ…』

もうツッコミどころ満載だ。

昔から音楽ができるって、なんで!?

なんで知ってんの!?怖いんだけど!?

小学校時代、同じクラスになったことは一度もない。

中学校は、そもそも俺は私立の男子校。

今朝の会話が、西城さんとの初めての会話なんだが!?

西城さん「あ、それとさ、今度テストあるでしょ?」

『数学の小テスト?』

西城さん「そうそう。それでちょっと分からない所があってさ…翔くんに教えてもらえたらなって思ってるんだけど…」

『はい?オレに?』

西城さん「翔くん、数学得意じゃん」

『いやいやいやいや、西城さんの方が頭良いでしょ!』

西城さん「そうでもないよ。良かったらって思ったんだけど」

『いや…うん、お、オレは良いけど…』

西城さん「ほんと!?それじゃ、お昼休みに図書室で良い?」

『うん…』

西城さん「やったね!約束だよ!」

『うん…』

そんなこんなで、昼休みに図書室へ行った。

緊張しすぎて、昼飯は何も食べられなかった。

少し経ってから西城さんが図書室に来て、「ごめんね、待った?」と聞かれて…

それ以降は、あまり記憶がない。

というのも、近かった。

隣に座って教えていたんだが、椅子をわざわざ寄せてきて、ほぼ半身が密着状態だった。

そのため、あまり記憶がない。

なんか良い匂いがした。

昼休みが終わって、そのまま二人で教室に戻る形になってしまったのだが、

それを見た橋本が、すごい形相で俺を見てきた…。

当然のように、帰り道で怒涛の質問攻めに遭った。

橋本「翔…おれは信じていた。」

『…』

橋本「お前は…お前は、黙って勝手に彼女を作るような男じゃないと、信じていたのに!!!!」

『ちょ…!!待て!!』

橋本「なにを待てってんだ!!お前、よりによってあの西城さんと二人きりで…!!どこに行って何をしていたぁぁぁぁぁ!!!」

『ま、待てって!落ち着け!』

橋本「落ち着けるかぁぁぁーーー!!!西城さんに告白したのか!?西城さんからコクるなんて有り得ないから、お前からイッたんだな!?お前からイッたんだろ!?で!?で!?で!?どうなったぁぁぁーーーー!?」

『違う!違うって!』

橋本「お前…!友達だと思っていたのにーーー!!!!」

この後、大変だった。

とりあえず落ち着かせて、ありのままに全てを話した。

まず、西城さんがなんでオレの名前を知っていたのかも分からない事。

名前だけではなく、音楽をやっていることまで知っていた事。

そして、数学を教えて欲しいと言われて、図書室で教えていた事――

橋本「そりゃ、お前の記憶がぶっ飛んでるだけだろ!」

『違うんだって。オレが小学校に転校してきたのは2年の頃で、一度も同じクラスになってないんだよ!』

橋本「…そう言えば、西城さんが俺たちの小学校に転校してきたのって、5年生の時だったよな」

『そ、そうなのか?』

橋本「そうだよ。で、6年の頃は俺とお前と同じクラスだったし、西城さんは違うクラスだったよな」

『ああ、それでお前が、西城さんを見に行こうとか言い出したんだよ』

橋本「覚えてるわ(笑)じゃ、5年の時は?」

『違うクラスだったと思う。というか転校してきたのが5年ってのも、初めて知った。』

橋本「そうか…で、お前は私立の中学行ったもんな。じゃ、本当に接点がないのか・・・」

『そうなんだよ。ちょっと怖いくらいなんだよな』

橋本「なーにが怖いんだよ!!あんな超絶美人巨乳に名前も趣味も覚えてもらってて、最高だろうが!!!」

『クソ野郎発言が絶えんな…』

橋本「図書室でホントに数学を教えてたのかぁ~~!?πの計算とか教えてたんじゃないだろうなぁ!?」

『何言ってんだよ…』

橋本「ああ~~~あ!!良いよな良いよなぁぁぁ~~!!俺も数学、勉強しようかなぁーーー!!」

『・・・これって、直接聞いた方が良いのかな』

橋本「・・・いや、止めといた方がいいんじゃねぇか」

『な、なんで?』

橋本「西城さんだって、お前と接点なかったことくらい知ってんだろ。その上で、そういう行動を取ってんだよ。それって、なんか言えない理由があるからじゃねぇの?」

『そ、そうか…確かに…』

橋本「あるいは・・お前に気が付いて欲しい事があるのかもな」

『気が付いて欲しい事?なんだよ、それ』

橋本「んなこと知るかよ!!ああ~、いいなぁ!お前の周りは巨乳美人にミニスカ美人先輩に、一体どうなってんだよぉぉぉ~~!!!!」

『・・・』

とりあえず今日はここまでにしよう。考えても仕方がない気がする。

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