【第四話】1年目の4月15日

フリーノベル『公開設定を間違えた件について』

何だかんだでブラスバンド部に入ることになってしまった。

橋本が「お前、ピアノ弾けただろ?一緒にブラスバンド部に入ろうぜ!」

と言い出したのだ。

『弾けるけど、なんでブラスバンド部?』

橋本「俺、中学でブラバン入って、トランペットやってたんだよ」

『マジか、そうだったんだな』

橋本「お前も一緒に入ろうぜ!!な?なっ?」

そんな感じでブラスバンド部の体験に引きずられていった。

実は中学の頃、おれ自身もブラスバンド部に入ろうとして諦めたことがあった。

小学校の頃からバンドに憧れていて、それを母に話したら「中学にはブラスバンド部というのがある」

と教えてもらい、中学に行ったらブラスバンド部に入ろうと思っていたんだ。

それはまぁ、また別の機会に書こう。

橋本の言う通り、ピアノは4、5歳くらいから始めて、中学1年まで習っていた。

小5の頃に「コード進行」ってヤツに目覚めて、めっちゃ独学で勉強したなぁ。

作曲や即興演奏なんかも、勉強するようになった。

綺麗なコード進行がとにかく好きで、

小学校の音楽室で昼休みに弾いたりして、コード進行や音楽理論を勉強していた。

まぁ、我ながら変わった小学生だったと思う。

その時に、橋本にはピアノが弾けることを話したような気もする。

それを覚えていてくれたのだろう。

中学校では訳あってブラスバンド部を諦めたが、

橋本のしつこい誘いに負けて、とりあえず体験入部という形で行ってみることにした。

最初に吹いてみたのはトランペット。…音が出なかった。

次にチューバ。ラッパを大きくしたような低音楽器だ。

…微妙に音が出た。パスパスいってたけど…。

最後にサックス。

サックスは前々から興味があったから、もしブラスバンド部に入るならサックスかなぁ…。

割とすぐに音が出た。指使いはほぼリコーダーと一緒だと先輩に教えてもらい、

ドレミファソラシドと、スケールみたいな感じもできた。

それがちょっと嬉しくなってしまい、この時点で「入部するならサックスだな」と思っていた。

サックスの体験を終えた時、一人の女子と目が合った。

後から知ったのだが、同じクラスの高宮彩音(タカミヤ アヤネ)という女子らしい。

なんかこっちをジッと見ていて、怖かった。なんなんだろうか…。

後日、改めて正式に入部届を出して、ブラスバンド部に入ることにした。

橋本からは

「マジでサンキューな!お前がいなきゃ、1年の男子部員が俺一人になるところだったよ!」

と感謝された。

『男子部員が1人だったら、なんかマズイのか?』

橋本「マズイなんてもんじゃねぇ!大変な事になる!」

『?』

橋本「部長と学生指揮の兼任!大型楽器の移動などの力仕事の全て!そして、文化祭などのイベントでイロモノ担当!」

『それくらい普通じゃないか?』

橋本「お前はやった事ないから言えるんだよ!!女子社会の中で男子一人が、どんだけ大変か!!」

『そ、そうなんだな…なんかスマン』

橋本「どの道、男子部員は俺と翔の二人だ。一緒にガンバロウぜ!!」

何をどう頑張るのかよく分からないが、いろいろ大変なんだと力説された。

その後、新一年生が視聴覚室に集められて、パート決めをすることになった。

先輩がそれぞれの希望を聞きつつ、定員を超える希望者がいるパートは経験者が優先され、

残った枠はジャンケンで決める形だった。

俺は当然、サックスを希望。

定員が3名のところ、経験者が1人。残り枠は2名。希望者は俺を含めて4人。ジャンケンだ。

いざ、ジャンケンで勝負をするとなった時、妙な視線を感じた。

なんだろうと思って見ると・・・高宮さんだった。

高宮さんはサックスの経験者らしく、すでにサックスパートになる事が決まっている様子だった。

よくワカランが、なんかジッとこっち見てる…。体験入部の時と言い、一体なんなんだ…。

結果、ジャンケンに負けてしまい、サックスパートに入ることはできなかった。

俺がジャンケンに負けたのを見ると、高宮さんは何か知らんが俯いて、そのまま体ごと向きを変えてしまった。

さて、サックスパートに入ることしか考えていなかった俺は、そのまま顧問の先生に呼び出された。

坂吉先生「翔はピアノを弾けるらしいな」

『(なんで下の名前呼び…?そしてピアノ情報はどこから!?)は、はい…』

坂吉先生「そうか、それじゃパーカッションに入ってくれ」

・・・パーカッション!!

パーカッションは打楽器パートのことだ。

何を隠そう、中学の頃にブラスバンド部を諦めた原因が、まさにパーカッションだった。

中学の頃、ブラスバンド部に仮入部した俺は、いきなりパーカッションに連れていかれた。

そこで見たのが、ドラムセットだった。

あまりにも巨大な楽器。どんだけたくさん太鼓があるんだ?シンバルもいっぱい…

こ、こんなもん、どうやって演奏するんだ…!?

それが怖くなって、俺はブラスバンド部を諦めたんだ。

そんな理由で?と、他人からバカにされそうだから誰にも言っていないが…

ここへ来てまたパーカッションとはなぁ。

何か腐れ縁でもあるのかもしれない。

あの時は中一で、まだ自分自身が小さかったこともある。

今なら大丈夫じゃないか。

そう考え、俺は「わかりました。よろしくお願いします。」と先生に伝えた。

パート決めが終わった後、各楽器の練習部屋へと移動することになった。

パーカッションの部屋に入ると、これまた強烈な先輩が二人いた。

風間壮太(カザマ ソウタ)先輩と、有栖川莉音(アリスガワ リノン)先輩だ。

とりあえず今日の日記は、これくらいにしよう。

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